自転車の最高速度は時速何キロ?ギネス記録から道路交通法の罠まで解説
自転車という乗り物が構造上、どこまでのスピードに耐えうるのかを示すのが各種のギネス世界記録です。平地における完全な人力走行から、特殊な風防を用いた走行、さらには急斜面のダウンヒルまで、それぞれの領域で信じがたい数値が打ち立てられています。
平坦な舗装路面において、完全に自力のみで走行する「人力最速」の世界記録は、カナダのエンジニア兼アスリートであるトッド・ライカート氏が2016年に打ち立てた時速144.17kmです。この記録で使用された車両「エータ(Eta)」は、炭素繊維製の滑らかなカウルで車体全体を覆ったリカンベント(仰向けに近い姿勢で漕ぐ自転車)であり、空気抵抗係数を極限まで減らす設計が施されています。時速100kmを超えると走行抵抗の9割以上が空気抵抗となるため、最高速度の更新には徹底したエアロダイナミクスの追求が不可欠となります。
さらに、前方を走る改造車の後流(スリップストリーム)を利用して空気抵抗をほぼゼロにした「ペーサー付き走行」では、アメリカの女性サイクリスト、デニス・ミュラー=コレネク氏が2018年にユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで時速296.009km(時速183.9マイル)という驚愕のギネス世界記録を樹立しました。特別に設計された超ハイギア比のモンスターマシンと、時速300km近くで疾走するプロドライバーの牽引支援によって成し遂げられた偉業です。
雪上や火山灰の急斜面を駆け下りるダウンヒル競技においても、フランスのエリック・バローネ氏がスキーのフライングスロープで記録した時速227.72kmなど、重力加速度を味方につけた極限への挑戦が記録されています。これらは極限環境下での特異な例ですが、自転車というシンプルな機械構造が秘める強大なエネルギーを物語っています。