日本整形外科学会専門医の審査基準と名医の選び方|創立100年の真相
整形外科の日常診療において、一般市民の間で根強く信じられている誤解が「痛みの原因は骨の変形だけにある」「手術の上手な有名大学教授にかかればすべて解決する」という思い込みです。
実際には、画像上の骨の変形度合いと本人が感じる痛みの強さは必ずしも一致しません。骨そのものよりも、関節を取り巻く筋肉、腱、靭帯の炎症や拘縮、さらには歩行バランスの破綻が激痛を引き起こしているケースが多々あります。こうした病態に対して、日本整形外科学会が長年にわたり社会啓発を続けているのが日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム(ロコモ)予防の取り組みです。
ロコモティブシンドロームとは、骨、関節、筋肉などの運動器の障害によって移動機能(立つ、歩く、階段を上る)が低下し、将来的に要介護になるリスクが高い状態を指します。学会が開発した「ロコモ度テスト」(立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25問診票)や、簡単な自宅トレーニング「ロコトレ」(開眼片脚立ち、スクワット)は、単なる高齢者の健康体操ではありません。脊椎や下肢関節の手術を受けた患者が、術後に日常生活を取り戻すためのリハビリ基盤としても極めて重視されています。
「手術をすれば元の若い頃の体に戻る」という過剰な幻想を抱く患者は少なくありません。しかし、どれほど名医が完璧な人工関節置換術を行おうとも、患者自身の筋力や関節可動域を維持するリハビリへの主体的取り組みがなければ、機能回復は望めません。「薬や手術だけに頼らず、運動器全体の機能を総合的に底上げしようとする指導を行ってくれるか」こそが、現代の整形外科医療における最も重要な視点です。