平安の髪型「尼削ぎ」とは?おかっぱ・ボブとの決定的な違いと由来

平安の髪型「尼削ぎ」とは?おかっぱ・ボブとの決定的な違いと由来の具体的な内容に迫る! わかりやすい言葉でご紹介しています。

まず言葉の基本定義を押さえましょう。「尼削ぎ」の読み方は「あまそぎ」であり、文献によっては送り仮名を省いて「尼削」と書かれるほか、語順を逆にした「そぎあま」という古語も存在します。

『精選版 日本国語大辞典』や『デジタル大辞泉』によると、尼削ぎの意味は大きく分けて次の2つに集約されます。

  1. 出家した女性(尼僧)が、髪を肩のあたりで切り揃えること。また、その髪型。
  2. 昔の女児(少女)が、髪を肩のあたりで切り揃えた髪型。子供の場合は「うない(髫・髫髪)」や「振り分け髪(ふりわけがみ)」とも呼ばれる。

一見すると、「仏門に入った年配の女性」と「あどけない少女」という正反対の属性が、なぜ全く同じ名称で呼ばれていたのか疑問を抱く読者も少なくありません。国文学や風俗史の専門家の間では、この2つの属性には「世俗の男女関係(婚姻制度)の外側に存在する」という決定的な共通項があったと整理されています。

当時の大人の貴族女性は、身の丈を超えるほどの黒髪を伸ばし、顔を御簾(みす)の奥に隠して男性からの求愛を待ちました。これに対し、まだ性的対象ではない幼女と、すでに現世の執着を捨てて仏弟子となった尼僧の双方が、成人女性の規範である長髪を排し、同じ肩の長さで髪を整えていた事実は、平安時代の身分規範を如実に物語っています。

田中 結衣

田中 結衣

デジタルマーケティングコンサルタント

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。