大宮の老舗町中華「食堂多万里」が昭和21年から愛される理由
「食堂 多万里」の暖簾をくぐる人々の目的は、決してノスタルジーに浸ることだけではありません。多くのリピーターを惹きつけてやまない最大の理由は、流行に一切左右されない完成された町中華の味にあります。
初来訪者の約8割が注文するのが、名物の「中華そば(ラーメン)」と「半チャーハン」のセットです。目の前に運ばれてくる中華そばは、まさに日本人が思い描く原風景のようなビジュアル。澄み切った醤油スープに、やや縮れのある中細麺が泳ぎ、豚モモ肉のしっとりしたチャーシュー、メンマ、ナルト、海苔、刻みネギ、そして彩りを添えるグリンピースが美しく配置されています。
スープを一口含むと、鶏ガラと豚骨の穏やかな旨味に、煮干しや香味野菜の柔らかな香りが重なり、角のない醤油ダレがじんわりと五臓六腑に染み渡ります。脂っこさや過度な塩気は一切なく、最後の一滴まで飲み干したくなる滋味深さです。
一方のチャーハンは、強火でしっかりと炒め上げられた絶妙なパラしっとり食感。細かく刻まれたチャーシューと玉子、ネギのシンプルな具材構成でありながら、ラードの香ばしさと塩胡椒のキレが際立ち、優しい味わいの中華そばスープと交互に口へ運ぶことで、無限のループを生み出します。
さらに、ツルリとした喉越しの皮に餡がぎっしり詰まった「ワンタンメン」も熱烈な支持を集める逸品。どれをとっても奇をてらわず、基本に忠実であり続けることこそが、80年間色褪せない人気の根源です。