森鴎外『舞姫』なぜエリスを捨てた?クズ男批判と実在モデルの真相

森鴎外『舞姫』なぜエリスを捨てた?クズ男批判と実在モデルの真相についての疑問解決ガイドを徹底解説します。

『舞姫』は完全なフィクションではなく、森鴎外(本名:森林太郎)のドイツ留学(1884年〜1888年)における実体験が色濃く反映されています。長年、文学界では謎とされてきた実在のヒロインですが、近年の徹底した公文書調査や戸籍調査によって、その正体が生々しく解明されてきました。

エリスの実在モデル「エリーゼ・ヴィーゲルト」の発見

2010年代以降の文学研究において、エリスのモデルはベルリン在住の仕立て工の娘、エリーゼ・マリー・カロリーネ・ヴィーゲルト(Elise Marie Caroline Wiegert)であることがほぼ確実視されています。当時の警察台帳や教会記録の照合により、彼女は小説のように教養のない貧民街の少女ではなく、中流家庭に近い堅実な市民層の女性であったことが判明しています。

鴎外を追って単身横浜へ|森家による非情な手切れ劇

史実が小説以上に凄惨なのは、帰国後の展開です。明治21年(1888年)9月8日に鴎外が帰国したわずか4日後、エリーゼは単身でドイツ客船に乗り込み、同年9月12日に横浜港へ到着しました。言葉も通じない極東の島国へ、愛する人を追って一人で渡航してきたのです。

しかし、森家にとって西洋人女性との婚姻は、将来を嘱望された陸軍軍医長補としての林太郎のキャリアを完全に断つ「絶対的タブー」でした。鴎外の母・峰(みね)や弟の森篤次郎、義弟の小金井良精らは総出でエリーゼが滞在する横浜のホテルへ急行。約1ヶ月間に及ぶ過酷な説得と交渉の末、手切れ金と帰りの船車券を渡し、10月17日の船で強制的にドイツへ帰国させました。

小説『舞姫』ではエリスを発狂させることで物語を強制終了させていますが、現実は「正気のまま異国へ追い返された一人の女性の絶望」が存在していました。鴎外が自らの冷酷な決断と親族への罪悪感を、あえてエリスの狂気という悲劇に昇華させなければ精神を保てなかった証左とも言えます。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

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