宮沢りえ『Santa Fe』が巻き起こした熱狂と美の真実
あの日、アメリカ・ニューメキシコ州サンタフェの砂埃が舞うロケーションで、一体何が起きていたのか。写真家・篠山紀信が構えるレンズの前に立った宮沢りえは、作為的なポーズや過度なライティングを一切脱ぎ捨てていた。強い日差し、荒涼としたアドビ建築の壁、そして風に揺れる髪。そこには作為的なエロティシズムではなく、乾いた風土と同化するひとりの人間の純粋な輪郭だけが焼き付けられている。
撮影現場の空気は極めて研ぎ澄まされていたという。篠山紀信はスタジオの密室性を嫌い、太陽の光と自然の陰影だけを頼りにシャッターを切り続けた。被写体となった彼女もまた、躊躇を見せるどころか、カメラを真っ向から見据え、自らの肉体をひとつの風景として差し出すような覚悟を宿していた。この二人の共犯関係が生み出した緊迫感こそが、写真集『Santa Fe』を単なるスキャンダルから不朽の表現へと押し上げた決定的な要因である。