『薬屋のひとりごと』猫猫役・悠木碧が放つ“怪演”の魔力――なぜ世界はこの毒味役に狂熱し続けるのか
猫猫というキャラクターの難しさは、その多面性にある。花街育ちのしたたかさ、人命に対する奇妙なドライさ、そして自らの肉体を実験台にする異常な知的好奇心。これらが単なる「奇行」で終わらず、観客に切実な共感を抱かせるのは、悠木碧の声帯コントロールの賜物だ。
台詞の語尾にわずかに混ぜられる冷淡な吐息。壬氏(ジンシ)からの甘い誘惑をまるで虫ケラでも見るかのようにあしらう乾いた声音。それでいて、弱者や市井の人間を見る視線には微かな温度を残す。声のトーンをわずか数ミリ単位で上下させるその精緻なグラデーションが、猫猫の肉体性をディスプレイの向こう側に立ち昇らせている。