資本コストとは?東証要請で激変する経営基準とWacc計算を徹底解説
現在、企業財務の現場や機関投資家との対話の場では、どのような議論が交わされているのでしょうか。大手製造業のIR担当役員や機関投資家のファンドマネージャーへの取材、そして投資家コミュニティの反応から、日本企業の生々しい実態が浮き彫りになっています。
「自社株買いでお茶を濁すな」機関投資家のシビアな視線
国内大手アセットマネジメントのシニアファンドマネージャーは、企業の姿勢について次のように苦言を呈します。
「PBR1倍割れの改善要請が出た当初、多くの企業が一過性の自社株買いや増配を発表してPBRを一時的に押し上げようとしました。しかし、我々が見ているのは小手先の株主還元ではありません。事業そのものの投下資本利益率(ROIC)が資本コスト(WACC)を上回る事業ポートフォリオへの再編です。不採算事業を切り離す覚悟のない企業の還元策は、単なる延命措置として見透かされます」
財務現場が直面する「理論と経営の乖離」
一方で、東証一部からプライム市場へ移行した中堅機械メーカーの財務部長は、社内改革の難しさを吐露します。
「長年、社内では『売上高』と『営業利益率』だけが事業部の評価基準でした。『各事業部がどれだけの資産を寝かせているか』や『資本コストを上回る稼ぎを出しているか』というROIC経営の概念を現場に落とし込もうとすると、『なぜ黒字なのに事業縮小を迫られるのか』と激しい抵抗に遭います。経営幹部自体のリテラシーの変革が最も重いハードルです」
個人投資家・SNSコミュニティの冷静な選別眼
SNSや投資コミュニティ(旧Twitterや投資掲示板)でも、個人投資家の視線は急速に洗練されています。
「決算発表で自社株買いが出ても、経営陣がWACCを具体的に何パーセントと認識しているか開示しない企業は買えない」
「資本コストを開示したうえで、それをどうやって上回るのか中期経営計画に数値で示せる企業だけがポートフォリオに残る」
といった声が日常的に飛び交っており、資本コストへの意識はプロの機関投資家だけの関心事ではなくなっています。