火事場の馬鹿力は実在する?脳のリミッター解除と潜在能力の全真相
「潜在能力がそれほど高いのなら、普段から100%の力を出せれば良いのではないか」と考える人も少なくありません。しかし、人体が普段から強力なリミッターをかけているのには、生命を存続させるための必然的な理由があります。リミッターを外すことには、即座に肉体を破壊しかねない筋肉断裂の危険性が常に付きまとうためです。
筋肉と骨をつなぐ腱の中には、「ゴルジ腱器官(腱紡錘)」と呼ばれるセンサーが組み込まれています。筋肉が過度な張力を発揮して断裂の危険域に達すると、ゴルジ腱器官が脊髄へシグナルを送り、筋肉の収縮を強制的に弛緩させる「Ib抑制」という神経反射が働きます。これがいわば肉体の物理的ヒューズです。
ところが、極限のアドレナリン奔流と脳のパニック状態は、このIb抑制すら力づくで遮断してしまいます。その結果、筋線維そのものが引き裂かれる肉離れはもちろん、骨からアキレス腱などの強固な腱が引き剥がされる剥離骨折、あるいは自らの筋力で自身の関節を脱臼させる破滅的な生体事故が引き起こされます。「馬鹿力」とは、肉体が壊れる代償と引き換えに一時的な奇跡を買い取る、文字通り捨て身の安全装置解除にほかなりません。