テレビ視聴率崩壊の真相|コアシフトとTver台頭が変えた現在地
「世帯視聴率が1桁台に落ち込んだからといって、現場が悲鳴を上げているわけではありません。むしろ、その数字で一喜一憂しているのは一部のまとめサイトだけです」。民放キー局で長年ゴールデン帯のバラエティ制作に携わる現役チーフプロデューサーは、取材に対して冷徹にそう語りました。世間で騒がれる「テレビ視聴率低下の理由」の根底には、単なる視聴者数の減少以上に、メディア業界が採用する評価指標の劇的なパラダイムシフトが存在します。
これまで長らく基準とされてきた世帯視聴率は、「調査対象となった世帯のうち、何世帯でテレビがついていたか」を示す指標に過ぎません。家族4人のうち祖父母だけがテレビをつけていても、若者がスマートフォンを見つめていても「1世帯」としてカウントされていました。しかし、日本の人口ピラミッドが高齢化するにつれ、世帯視聴率を追いかけると「シニア層が好む時代劇や健康情報ばかりが高数値を記録する」という偏りが顕著になったのです。
そこで民放各局と広告主(スポンサー)が舵を切ったのが、世帯視聴率と個人視聴率の違いを明確にした上での「コア視聴率」の導入です。コア視聴率とは、主に購買意欲が旺盛な男女13歳〜49歳(局によっては「新アクティブ層」として15〜59歳)に絞り込んだ個人視聴率を指します。スポンサー企業にとって、購買行動に結びつきにくい超高齢層の10万世帯よりも、日用品や自動車、サブスクリプションサービスを活発に契約する現役世代の5万人のほうが圧倒的に価値が高いのです。
その結果、制作現場では明確な変化が起きました。世帯視聴率が12%獲れてもコア視聴率が1%台であればスポンサー枠が売れず番組は終了を余儀なくされ、逆に世帯視聴率がわずか4%台であっても、コア視聴率で同時間帯トップを獲得していれば局内では「大成功」と称賛され、CM枠はプレミアム価格で完売します。外から見える「視聴率の暴落」は、業界が自ら旧来の世帯数値を捨て去り、実利的なターゲット層へ照準を絞り直したことによる必然的な結果なのです。