Adoの迫力はどう宿る?喉を痛めないがなり声の出し方と仮声帯の真相

Adoの迫力はどう宿る?喉を痛めないがなり声の出し方と仮声帯の真相について知っておくべき 注意点を厳選して解説いたします。

多くの人が抱く「がなり声=喉を力いっぱい絞り上げて叫ぶ声」という認識は、医学的にも発声工学的にも完全な誤解です。この勘違いこそが、数多くの歌い手の声を奪ってきた最大の要因といえます。

人間の喉の奥には、音の高低や基本的な音色を作る2枚のひだである「真声帯(しんせいたい)」が存在します。そして、そのすぐ上方には「仮声帯(かせいたい/前庭ヒダ)」と呼ばれる一対の組織が位置しています。普段の会話やクリーンな歌声では真声帯のみが振動していますが、ロック歌唱におけるがなり声は、この上部にある仮声帯を適度に狭め、通過する呼気によって不規則な乱流振動を起こすことで生まれます。

喉を痛める人と痛めない人の境界線は、極めて明確です。

声が枯れてしまう人は、喉周辺の筋肉(胸骨舌骨筋や甲状舌骨筋など)を強烈に緊張させ、真声帯同士を力任せに打ち付けています。この状態は、繊細な粘膜にヤスリをかけているようなものであり、わずか数分の歌唱でも内出血や急性の声帯炎を引き起こします。一方、喉を痛めないプロは、「真声帯はリラックスさせたまま高圧の呼気を通し、仮声帯だけを副次的に巻き込んで振動させる」という高度な分離コントロールを行っています。支点は喉仏ではなく、横隔膜と腹横筋によって支えられた強い呼気圧にあるのです。

阿部 裕樹

阿部 裕樹

エンタメ専門ジャーナリスト

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。