阪堺電車はなぜ生き残れたか?最古のモ161形と運賃・乗り方の真相
阪堺電車を象徴するアイコンといえば、1928年(昭和3年)に製造された日本最古の現役路面電車車両「モ161形」だ。誕生から1世紀近くが経過した現在も、当時の重厚な木製ニス塗り内装、真鍮製の金具、窓枠の細工を色濃く残したまま、通常営業路線を走る姿は国内外の鉄道愛好家から「動く産業遺産」として熱狂的な支持を集めている。
しかし、旅行者が最も誤解しやすいのがその運行状況だ。モ161形は冷房装置を搭載していない。近年の大阪の酷暑環境では車内温度が危険水準に達するため、原則として晩秋から初春(11月中旬〜翌3月頃)までの涼しい季節に運行期間が限定されている。春から初秋にかけては車庫で厳重に保管されており、貸切列車や限定イベントを除いて定期運用に入ることはない。
冬場であっても、全編成が毎日走っているわけではない。定期検査のタイミングや車両のコンディション調整があるため、現役稼働している編成は日によって異なる。新年の住吉大社初詣輸送(正月三が日)には多数のモ161形が集中的に投入され、往年のフル稼働シーンを目撃できる最大の好機となるが、通常期に狙う場合は公式X(旧Twitter)等で発信される運行予定や臨時運用のアナウンスを事前にチェックすることが欠かせない。
対照的に、日常の輸送を支える近代化の旗手として存在感を放つのが、2013年以降に導入された超低床車両「堺トラム(1001形)」だ。千利休ゆかりの茶の湯をイメージした「茶ちゃ」、堺の伝統色を取り入れた「紫おん」、爽やかな「青らん」といった洗練されたカラーリングを纏い、段差のない乗降口と完全空調を備える。100年近い歴史を誇る古典車両と、現代のバリアフリーLRV(次世代型路面電車)がすれ違う光景こそが、阪堺電車ならではの醍醐味である。