京都小学生行方不明事件と台湾新婚旅行失踪の真相|噂と現実の境界線
京都の事件が現実の痛ましい未解決事案であるのに対し、「台湾新婚旅行失踪事件」は世界的に流布した都市伝説の典型例です。ネット上で語られるストーリーの骨子は、次のようなものです。
「新婚旅行で台湾(または香港・東南アジア)を訪れた日本人夫婦。妻が路地裏のブティックで『服を試着してくる』と試着室に入ったきり戻らない。夫が店員に問い詰めるも『そんな客は最初から来ていない』とシラを切られる。警察に駆け込むも見つからず、失意のまま夫は帰国。数年後、再び現地を訪れた夫が、見世物小屋(あるいは違法施設)で四肢を切断され『だるま』のようにされた変わり果てた妻を発見する――」
この背筋の凍るような怪談は、完全なフィクションです。社会学者や民俗学者の研究によって、その歴史的ルーツは1969年にフランスのオルレアンで発生した集団パニック「オルレアンの噂」であることが判明しています。当時オルレアンでは、「ユダヤ人が経営するブティックの試着室に隠し扉があり、女性客に注射を打って拉致し、国外へ人身売買している」という根拠のないデマが瞬く間に拡散し、暴動寸前の騒動に発展しました。
この噂が1970年代から1980年代にかけて世界各国へ波及し、日本においてはバブル期の海外旅行ブームと結びつきました。「言葉の通じない異国への潜在的恐怖」や「異文化に対する偏見と不安」が投影され、渡航先が台湾や香港、中国などに置き換えられた上で、日本の見世物小屋のイメージ(だるま)が合体して定着したのです。外務省の安全情報や台湾現地の警察当局の公式記録を照会しても、このような手口で日本人観光客が組織的に拉致・切断された事実は一件たりとも存在しません。