殺人現場の規制線の向こう側|鑑識初動捜査から特殊清掃とその後の行方を追う
ネット上の掲示板やSNSでは、事件現場に関して多くの誤解や都市伝説が語られています。しかし、取材と公式データに基づけば、それらの大半は事実無根です。
第一の誤解は、「一度別の入居者を短期間住まわせれば(いわゆるロンダリング)、その後の告知義務は完全に消滅する」という説です。過去の裁判例では、告知を免れる目的で故意に短期契約を挟んだ悪質な偽装工作に対して、業者側に重い損害賠償責任を認めています。ネットで囁かれる「ロンダリング手法」は司法の場では一切通用しません。
第二の誤解は、「警察が鑑識で現場を荒らした後は、公的機関が修復費用を補償してくれる」という認識です。被害者支援制度により一定の給付金が支給されるケースはあるものの、現場となった賃貸住宅の清掃・修繕費用は原則として物件の所有者や連帯保証人、あるいは被疑者(加害者)への民事請求に委ねられます。加害者に支払い能力がない場合、所有者が数百万円の損害を全額自己負担せざるを得ないのが日本の法制度の実情です。