なぜイギリスは4つの国?正式名称の真実と連合王国の現在を追う
日常会話で使われる「イギリス」「英国」「イングランド」、そして正式名称である「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」は、指し示している領域や概念が全く異なります。この混同を解く鍵は、「地理的名称」と「政治的実体」の峻別にあります。
まず、英語の公式表記であるUnited Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(略称:UK)を分解すると、国家の地理的・政治的成り立ちが明瞭に浮かび上がります。
- グレートブリテン(Great Britain):ヨーロッパ大陸の北西に位置する最大の島「グレートブリテン島」を指す地理的名称。この島の中に「イングランド」「スコットランド」「ウェールズ」の3地域が存在します。
- 北部アイルランド(Northern Ireland):隣の島である「アイルランド島」の北東部6州を指す政治的地域。アイルランド島の南部・西部を占める「アイルランド共和国」とは別の主権下(UK管轄)にあります。
- 連合王国(United Kingdom):これら4つの異なる主権・領域が、単一の君主(現在はチャールズ国王)のもとに合邦・統合された「立憲君主制国家」であることを宣言する政体名です。
では、なぜ日本人はこの連合国家を「イギリス」と呼ぶのでしょうか。その歴史的理由は、戦国時代の南蛮貿易にまで遡ります。当時、ポルトガル商人がイングランド人を「イングレス(Inglez)」と呼んでいた音声が日本語に転訛し、「エゲレス」「イギリス」として定着しました。漢字表記の「英国」も「英吉利(イギリス)」の頭文字を取った略称です。つまり、日本で普及している「イギリス」という呼称は、厳密には連合王国全体ではなく、構成国の一つである「イングランド」のみを指す言葉から派生した誤読の歴史を抱えています。