積水ハウス地面師事件の担当者はクビ?懲戒解雇の真相と現在の処遇
積水ハウスが地面師グループの手口を見抜けなかった経緯を振り返ると、そこには信じがたいほど無防備な「見落とし」と「警告の黙殺」が積み重なっていました。舞台となったのは、JR五反田駅から徒歩数分、目黒川沿いに位置する約2000平方メートルの広大な旅館「海喜館」跡地です。資産価値は当時で100億円近くとも囁かれた超一等地でした。
五反田海喜館の担当部署であった東京マンション事業部は、好立地の仕入れ競争で他社に競り勝つ焦燥感から、通常では考えられない拙速なデューデリジェンス(資産査定・身元確認)で契約を突き進めました。社内調査報告書が指摘した、見抜けなかった決定的な要因は以下の通りです。
第一に、本物の元女将(所有者)から届いた「内容証明郵便」を怪文書と決めつけたことです。売買契約締結の直後、本物の所有者から「私は入院中であり、売却の意思は一切ない。契約は無効である」という実直な警告通知が会社宛てに届いていました。しかし、現場担当者や推進派の幹部は「ライバルデベロッパーによる取引妨害の嫌がらせだ」と一蹴し、差出人の確認すら怠りました。
第二に、本人確認の不自然さを意図的に無視したことです。地面師側が用意した偽の所有者(元女将役)は、パスポートの生年月日や自身の干支を質問された際に即答できず詰まる場面がありました。さらに、登記に必要な書類に押された印鑑登録証明書や権利証の真贋鑑定にも複数の疑義が生じていたにもかかわらず、担当部署は取引成立を優先して追及を取りやめました。
極め付きは、法務局での仮登記却下という最大級のアラートです。所有権移転の前提となる手続きに対して法務局から疑義が出された際、通常の不動産取引であれば直ちに決済をストップすべき局面でした。ところが、担当部署は「決済期日に遅れれば違約金が発生する」「他社に物件を奪われる」という強迫観念に駆られ、本人不在のまま巨額の預金小切手を地面師グループに引き渡してしまったのです。