ひき逃げ指名手配犯の現在地と逃亡心理|懸賞金と時効の真実を追う
逃亡犯の頭を常に支配しているのが、法的な「時効」の存在です。現行法規において、交通事故に伴う罪状と公訴時効の年数は複雑に分岐しています。自動車を運転して人を死傷させた場合に適用される「過失運転致死傷罪」の公訴時効は10年、さらに飲酒や著しい速度超過などを伴う「危険運転致死罪」の時効は20年(傷害時は10年または12年)と定められています。一方、事故を起こした後に現場から立ち去る「救護義務違反(道路交通法第72条)」の公訴時効は7年(併合罪加重等の関係で最長10年)です。
この時間的猶予が、一部の逃亡犯に「数年間耐え抜けば法の追及を逃れられるのではないか」という極めて卑劣な計算を抱かせる要因になってきました。しかし、近年の司法判断と世論の動向はこの「逃げ得」を断じて許さない方向へ舵を切っています。別府ひき逃げ事件において、遺族や支援者らは「故意に車を急加速させて追突した明確な殺意がある」として、容疑者を法定刑が重い「殺人罪」および「殺人未遂罪」で起訴・指名手配するよう求める約5万人規模の署名を大分地方検察庁に提出しました。
刑事訴訟法が改正された2010年以降、人を死亡させた殺人罪の公訴時効は完全に撤廃されています。万が一、検察によって殺人罪への訴因変更や別件逮捕の手続きが取られた場合、容疑者がどれほど年数を経て逃走を続けようと、時効が完成することは法的にあり得ません。加えて、容疑者が海外へ逃亡していた期間については、刑事訴訟法第255条の規定に基づき時効の進行が完全に停止します。法網の抜け穴を期待した逃亡生活の先に待つのは、決して平穏な自由ではなく、永久に続く追及の恐怖だけです。