力士の髪事情と髷の真相|薄毛で引退の噂や床山の職人技を徹底解明

力士の髪事情と髷の真相|薄毛で引退の噂や床山の職人技を徹底解明に関する主要なデータを分かりやすく解説いたします。

大相撲中継の客席や巡業会場に足を踏み入れると、ふわりと漂う甘美なバニラのような香り。これこそが力士が頭髪に塗り込む「鬢付け油(びんづけあぶら)」の芳香です。大相撲界で使用されている代表的な油は、愛知県の老舗メーカーが製造する「オーミすき油」などで、ハゼノキの実から抽出される木蝋(もくろう)とヒマシ油を主原料としています。

この鬢付け油は、室温では固形に近く、手作業の摩擦熱で温めることで初めて伸びる性質を持っています。土俵上で汗をかいても溶け落ちず、砂まみれになっても激しい衝撃から髪型を保ち、さらには力士の頭部を怪我から保護するクッションの役割を果たします。

鬢付け油の落とし方と洗髪の過酷なルーティン

一方で、この強力なキープ力は「落としにくさ」と表裏一体です。一般的な家庭用シャンプーを泡立てても、木蝋由来の油膜が水を完全に弾いてしまい、全く泡立ちません。

元力士らの証言や部屋の現場報告によると、洗髪には特別な手順が用いられます。

  1. 高温のシャワーで油を温める:まずは熱めのお湯を数分間当て続け、固まった木蝋を軟化させる。
  2. 固形石鹸や専用プレ洗髪剤の下地洗い:アルカリ性の強い固形石鹸(伝統的な赤箱石鹸など)を直接頭皮と髪に擦り付け、油分を乳化させて粗落としする。場合によってはベビーオイルや植物油を先に馴染ませて油で油を浮かせる技法も取られる。
  3. 本洗い(2〜3回):油分が浮いた段階で強力な脱脂力を持つシャンプーを泡立て、2回から3回に分けて徹底的に洗い流す。

このように1回の洗髪に30分以上の労力を要すること、そして毎日洗いすぎると油分が完全に抜けて翌朝の髷がまとまらなくなることから、力士の洗髪頻度は「2〜3日に1回」が角界のスタンダードとなっています。稽古後は水やお湯で汗と砂を丹念に流し、しっかりと乾かして再び床山に結い直してもらうサイクルを繰り返しています。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。