両国ほそ川の待ち時間と予約事情|ミシュラン十割蕎麦の真価を解剖
暖簾をくぐり席に着くと、品書きは極めて潔く削ぎ落とされていることに気付きます。名物として双璧を成すのが、十割の「せいろ蕎麦」と、職人技の極致である「穴子天ぷら」です。
運ばれてきたせいろ蕎麦は、角がピンと立った見事な細打ち。鼻腔を近づければ、挽き立てならではの穀物の甘美な芳香が立ち上ります。つなぎを一切使わない生粉打ちでありながら、ぼそぼそとした脆さは皆無で、しなやかなコシと絹のような滑らかさを併せ持ちます。辛汁は江戸前の伝統を汲む濃口・辛口設計ですが、醤油の角が綺麗に丸められており、蕎麦の先端を3分目ほど浸して勢いよく手繰ると、口中いっぱいに穀実の旨味が爆発します。
そして、訪れる客の多くが注文する「穴子天ぷら」は、専門店を凌駕するクオリティを誇ります。東京湾や対馬など厳選された活け締め穴子を使用し、太白胡麻油を主とした油で薄衣をまとわせてカリッと揚げ切る。箸を入れると「サクッ」と小気味よい破裂音が響き、中からは湯気とともに驚くほどふっくらとジューシーな穴子の身が現れます。油切れが極めて良いため、天ぷら特有の重さを感じさせず、添えられた塩だけで淡白な旨味が極限まで際立ちます。
ランチの平均客単価は、せいろ1枚のみで1,350円、天ぷらをシェアして追加せいろを頼む王道の構成であれば1人あたり約3,000円〜4,500円に収まります。一般的な町蕎麦と比較すれば値は張りますが、ミシュラン星付き店としての素材原価と技量を考慮すれば、価格に見合う圧倒的な満足感が得られます。