「見る」の謙譲語は拝見する?敬語の使い分けとビジネスメールの落とし穴
ビジネスメールの現場で非常によく見かけるのが「拝見いたします」や「拝見させていただきます」というフレーズだ。丁寧さを追求した結果生まれた表現だが、言葉の成り立ちを分解するといくつかの注意点が存在する。
「拝見いたします」は二重敬語なのか?
文化庁が策定した『敬語の指針』に基づくと、「拝見」は相手を高め自分を低める「謙譲語I」であり、「いたす」は自分側の動作を低く表現して相手への丁重さを表す「謙譲語II(丁重語)」に分類される。
厳密な意味では同種の敬語を重ねる二重敬語に近い構造を持つが、現代の商習慣においては「拝見する」をより改まったトーンにした標準的表現として広く定着している。社外の重要な取引先や役員クラスに対するメールで「拝見いたします」を用いることは、失礼に当たらないと判断して差し支えない。
「拝見させていただきます」が違和感を生む理由
問題視されやすいのは「拝見させていただきます」である。この言葉は以下の3つの要素で構成されている。
- 拝見(謙譲語)
- させて(相手の許可を求める「させてもらう」の使役形)
- いただく(恩恵を受ける意味の謙譲語)
「〜させていただく」という表現は、本来「相手の許可を得て、その恩恵を受ける」という条件が揃った場面で使うのが文法上の基本である。例えば、取引先から送られてきた見積書や日常の連絡事項を確認する行為に対して、相手の特別な許可は介在しない。それにもかかわらず多用すると、受け手によっては「慇懃無礼(過剰に丁寧でかえって失礼・回りくどい)」あるいは「責任逃れのニュアンス」を感じ取ってしまう。
簡潔さと明確さが重視される現代のビジネスコミュニケーションでは、「拝見しました」「拝見いたしました」と言い切るほうが、知的で洗練された印象を与える。