天然痘ウイルスは今どこに?世界2か所保管の真相と再流行の脅威
ネット上やSNSでは、天然痘に関して「過去にワクチンを打ったから自分は一生安心だ」「実験室から漏れなければ大丈夫」といった楽観的な誤解が散見されます。しかし、公衆衛生と安全保障の専門家が警告する現実は遥かにシビアです。
誤解1:「昭和の時代に種痘を打った世代は永久に免疫がある」
日本では1976年(昭和51年)に種痘の定期接種が事実上中止されました。それ以前に生まれた世代の腕には接種痕が残っていますが、ワクチンの予防効果は接種後5年から10年で徐々に低下し、数十年を経た現在では重症化予防効果は一部残存する可能性があるものの、感染そのものを完全に防ぐ中和抗体価は大幅に減衰していると指摘されています。つまり、50歳前後の世代であっても安心はできず、1970年代後半以降に生まれた世界中の世代は完全な「無免疫状態」にあります。
誤解2:「天然痘が流出しても現代の医療ならすぐに制圧できる」
天然痘が天然痘生物兵器の脅威として最上位(カテゴリーA)に分類されている理由は、その高い致死率と伝播力だけではありません。初期症状がインフルエンザや一般的なウイルス感染症と見分けがつかないため、最初の数日間で医師が天然痘を疑うことは極めて困難です。発疹が出て初めて確定診断に至る頃には、すでに多数の医療従事者や一般市民へと飛沫感染が広がっています。
さらに、現代社会におけるグローバルな交通網は、かつて根絶作戦を展開していた1970年代とは比べものにならないスピードで発達しています。潜伏期間中の感染者が国際線の航空機に乗れば、症状が出る前の数日間でウイルスは地球の裏側まで拡散し、瞬く間に世界同時多発アウトブレイクを引き起こす天然痘再流行のリスクを秘めています。