霞会館の扉の向こう側:消えたはずの華族と末裔たちが生きる現在
戦後の現実は容赦のないものだった。1946年から導入された最大90%に達する財産税、農地改革による所有地の強制買収、そして猛烈なインフレーション。広大を誇った大名屋敷や別邸の多くは手放され、あるものはホテルニューオータニやグランドプリンスホテル高輪の敷地となり、あるものは外国の大使館へと姿を変えた。
では、現代を生きる末裔たちの職業や資産はどうなっているのか。実態は「超富裕層としての君臨」ではなく、「知的専門職や文化人としての定着」が主流を占める。
多くの末裔は、有名私立大学の教授、医師、弁護士、あるいは大手総合商社や金融機関のビジネスパーソンとして堅実なキャリアを築いている。莫大な不動産を維持し続ける一族はごく一部に過ぎず、大半は一般的なアッパーミドルの生活水準に収まる。しかし、先祖伝来の古文書や美術品を守り続ける文化財団の理事長、神社仏閣の宮司、あるいは伝統芸能のパトロンといった役割を担うケースが多く、彼らが受け継ぐ資産の本質は「貨幣」から「歴史的・文化的な象徴資本」へと転換したと言える。