藤沢武夫の生涯と経営哲学|本田宗一郎の天才参謀が遺した偉業
藤沢武夫が実行した施策は、当時の日本のビジネス常識を根底から覆すものばかりでした。その中でも、経営史上で特筆すべき3つの功績が存在します。
第1に、スーパーカブの販売ルート革命です。従来のバイク販売店にとどまらず、全国の街の自転車店や米屋、蕎麦屋の店主たちへダイレクトメールを送り、直販代理店網を一気に構築。月産数万台規模の大量生産体制を支える流通インフラをゼロから創出しました。
第2に、1959年の米国法人(アメリカン・ホンダ・モーター)設立です。国内が手狭になったからではなく、「世界一厳しい市場で勝てなければ本物ではない」という藤沢の決断により、ロサンゼルスに現地法人を設立。「You meet the nicest people on a Honda(ホンダに乗ると素晴らしい人に出会う)」という歴史的キャンペーンを展開し、北米でのブランド確立を成功させました。
第3に、「本田技術研究所」の完全独立(1960年)です。目先の売上や経理部門の都合に研究開発が振り回されないよう、研究所を別会社化し、研究者の自由な発想と発言権を担保しました。これはGAFAをはじめとするグローバルテック企業が取り入れる独立R&D体制の先駆けと言えます。