似て非なる料理!ハヤシライスとビーフシチューの決定的な違いを解剖
両者のアイデンティティを深掘りするうえで欠かせないのが、「洋食」と「西洋料理」の定義の違いです。西洋料理がヨーロッパの伝統的な調理法そのものを指すのに対し、洋食は明治以降の日本人が白米に合うよう独自に翻案・進化させた和製西洋料理を意味します。
ハヤシライスはまさに純国産の「洋食」の代表格です。その発祥には諸説ありますが、最も有名なのが大手書店・丸善の創業者である早矢仕有的(はやし ゆうてき)氏が考案したという説です。医師でもあった彼が、病院の患者や社員のために栄養価の高い牛肉と野菜をご飯に合う煮込み料理として振る舞った「早矢仕ライス」が語源とされています(諸説あり、ハッシュドビーフが訛ったという説も根強く残ります)。
一方、ビーフシチューは16世紀から17世紀のヨーロッパにルーツを持つ正統派の「西洋料理」です。フランスの家庭料理「ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)」などがルーツとされ、明治初期に外国人居留地やホテルを通じて日本へ伝来しました。1872年(明治5年)の料理書『西洋料理通』にはすでにシチューの記述が見られ、鹿鳴館時代などの上流階級の晩餐会を彩る高級西洋料理として定着していきました。