時計のオーバーホールは本当に必要?放置の末路と最新費用相場【2026】
「毎日問題なく動いているのに、なぜ高額な費用を払ってまで時計のオーバーホール(分解掃除)を行わなければならないのか」という疑問を持つ愛好家は後を絶ちません。しかし、精密機器である時計にとって、オーバーホールは人間でいう「定期健康診断」と「精密外科手術」を兼ねた不可欠な工程です。
腕時計の内部には、100個から300個以上もの極小パーツが組み込まれており、金属同士の摩擦を減らすために各所へ特殊な潤滑油が注油されています。この潤滑油は、時計を使用していなくても約3〜4年で経年劣化・揮発し、油切れや酸化による粘着化を起こします。油が切れた状態で歯車が回転し続けると、金属同士が直接擦れ合い、微細な金属粉が発生して内部パーツを急速に削り落としてしまいます。
さらに見落とされがちなのが、リューズや裏蓋の隙間を塞いでいるゴム製防水パッキンの劣化です。パッキンが硬化すると、汗や日常の湿気、突然の雨が内部へ侵入します。文字盤の腐食やサビの発生を招き、最悪の場合はムーブメント全体の交換を余儀なくされ、数十万円規模の莫大な修理費が発生します。
行動経済学や心理学では、重大なリスクが目前に迫っていても「自分だけはトラブルに遭わない」と思い込む心理傾向を「正常性バイアス」と呼びます。時計のメンテナンスにおいても、「昨日まで動いていたから明日も大丈夫」という思い込みが、結果として最も高くつく修理代を引き寄せてしまうのです。