樋口毅宏の現在と引退の真相|鬼才が主夫生活で見出した新境地
樋口毅宏のバックボーンを語る上で欠かせないのが、出版社の名物編集者として培った叩き上げの現場感覚です。1971年に東京都豊島区雑司が谷で生まれた樋口は、白夜書房などの出版社に勤務し、雑誌『BUBKA』をはじめとするディープなサブカルチャー誌や芸能スキャンダル、格闘技、アングラカルチャーの最前線で辣腕を振るいました。
編集者として数々の過激な企画を手がけた後、30代後半で執筆したデビュー作『さらば雑司ヶ谷』が2009年に世に出るや否や、出版界に激震が走ります。生まれ育った街を舞台に、ヤクザ、暴力、狂気、そして男たちの不器用な情念を凄まじいスピード感で描き出した同作は、「平成のハードボイルド決定版」として各メディアで絶賛を浴びました。
エリート文壇コースとは一線を画す、夜の底を這いずり回ってきた者だけが持つ生々しいリアリティ。その圧倒的な熱量は、続く『日本の夜の底で』や『インテリと暴力』といった作品群にも色濃く受け継がれ、一躍時代の寵児として確固たるポジションを築き上げました。