ピーター・パンとウェンディが結ばれない理由|原作の結末と裏設定を解剖

ピーター・パンとウェンディが結ばれない理由|原作の結末と裏設定を解剖の特集記事を解説します。役立つ情報がチェックできます。

1953年のディズニーアニメーションでは、ロンドンの自宅に戻ったウェンディが夜空を見上げ、父親のジョージが「あの船を昔見たことがあるような気がする」と呟くノスタルジックで温かな幕引きが描かれます。しかし、J.M.バリーによる1911年の原作小説『ピーターとウェンディ』の最終章「大人になったウェンディ(When Wendy Grew Up)」に記された結末は、美談とは程遠い、冷徹で切ない現実を突きつけています。

ウェンディは現実世界へ帰還後、名門校へ進学したロストボーイズたちと共に成長し、普通に恋をして結婚し、娘のジェーンを出産します。一方のピーターは、「毎年春の大掃除の季節にウェンディをネバーランドへ連れて行く」と約束したにもかかわらず、気まぐれな性格ゆえに訪問の間隔は開き、やがて何年間も姿を現さなくなりました。

長い歳月を経てピーターが子供部屋の窓から再び現れたとき、ウェンディはすでに立派な大人の女性になっていました。ピーターは大人になった彼女の姿を見て、恐怖と怒りを露わにし、激しく拒絶します。さらに残酷なのは、ピーターの忘却癖でした。かつて命懸けで戦ったフック船長のことすら忘れ去り、あんなにも自分に尽くした妖精ティンカー・ベルの消息についてウェンディが尋ねると、ピーターは悪びれもせずにこう言い放つのです。

「ティンク?誰のことだい?……ああ、あいつはもう死んだのかもしれないな。妖精の命は短いからね。僕はもう覚えていないよ」

かつて自分を愛してくれた存在を瞬時に忘れ、顧みることもないピーターの冷酷さ。そして彼は、泣き崩れるウェンディを置き去りにし、ベッドにいた彼女の幼い娘ジェーンを「新しいお母さん」としてネバーランドへと連れ去ります。さらに物語の結末では、ジェーンが大人になるとその娘マーガレットが、そしてマーガレットが大人になるとそのまた子供が……というように、ピーターによる母性の搾取と代替わりのサイクルが永遠に続いていくことが明かされます。この結末こそが、原作が「美しくも最も残酷な童話」と評される所以です。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。