えの旧字「ゑ」はなぜ消えたのか?2026年最新事情と幻の文字をめぐる全記録
まず大前提として、「ゑ」は「え」の旧字ではない。正確には「ワ行のエ段」に属する仮名であり、かつては「わ・ゐ・う・ゑ・を」と並ぶワ行の一員だった。つまり「え」とは音の系統が異なる、独立した文字だったのである。現代人にはほぼ同じに聞こえるが、奈良時代から平安時代にかけては「ゑ」は「ヱ」と発音され、口の形も現代の「え」とは異なっていたとされる。これは中国の音韻学や上代特殊仮名遣いの研究でも裏付けられている。実際、国立国語研究所や各大学の日本語学研究室が公開する資料によれば、平安期の文献には「ゑ」と「え」が明確に書き分けられており、当時の貴族は両者を聞き分けていた可能性が高い。
この文字のルーツは、漢字の「恵」の草書体にある。「ゑ」の形を見れば、なるほど「恵」の崩し字だと言われれば納得できるだろう。同様に「ゐ」は「為」の草書体、「を」は「遠」の草書体に由来する。仮名が漢字から生まれた変体仮名の流れを汲む以上、こうした成り立ちは自然なことである。Wikipediaの「ゑ」の項目にも、この由来が図版付きで詳細に記載されているが、実際に古写本を見ると、その変遷が一目瞭然だ。