変幻自在の表現者・佐藤江梨子が魅せる新境地と知られざる素顔
狂気を帯びた役柄の一方で、徹底して削ぎ落とした静寂の芝居でも非凡な才能を見せつける。阪神・淡路大震災から15年を迎えた神戸の街を舞台にした『その街のこども 劇場版』は、彼女のフィルモグラフィにおけるもうひとつの到達点と言える。
自身も震災を経験している彼女が演じたのは、心に深い傷を抱えながら夜の街を歩く女性。大仰なセリフや劇的な展開に頼ることなく、佇まいと微細な視線の揺らぎだけで登場人物の過去と現在を語り明かした。この作品によって、彼女の評価はテレビドラマ界や映画関係者の間でさらに盤石なものとなり、人の心の機微を描く重厚なヒューマンドラマにおいて不可欠な存在としての地位を確立した。