北天佑の妻・栄美さんが歩んだ激動の軌跡と家族が紡ぐ現在の姿
順風満帆に見えた家族の歩みを突如として断ち切ったのは、冷酷な病魔だった。2006年春、二十山親方は体調不良を訴え、検査の結果、悪性黒色腫(メラノーマ)が発見される。すでに病状は深刻で、肺や脳への転移が確認されていた。
告知を受けた栄美さんの胸中は察するに余りある。だが、彼女は決して取り乱すことなく、夫に病名を伏せながら必死の看病を続けた。「親方をもう一度土俵に立たせたい」その一心で、病院と自宅を行き来する過酷な日々。医師の懸命な治療と家族の祈りも虚しく、発覚からわずか数ヶ月後の2006年6月23日、北天佑は45歳という若さで帰らぬ人となった。
この壮絶な闘病と家族の絆は、後に優れたスポーツノンフィクションの題材としても取り上げられ、多くの人々の涙を誘った。遺された幼い娘たちを前に、栄美さんは「泣いてばかりはいられない」と前を向くことを誓ったという。