怪演と執念の生涯。三國連太郎が遺した日本映画の真実と未公開秘話
彼の役作りにおける執念は、しばしば常軌を逸していた。映画『異母兄弟』の撮影に臨む際、老人の役柄に圧倒的な説得力を持たせるため、なんと自らの健全な前歯を10本も抜歯して現場に現れたエピソードは有名だ。監督や共演者が絶句する中、本人は「役を生きるためなら当たり前のこと」と何食わぬ顔で言い放ったという。
肉体そのものを削り、役柄と一体化するアプローチは、CGや特殊メイクが発達した現代でも容易に真似できるものではない。彼にとってカメラの前に立つことは、単なる芝居ではなく、己の命を削ってスクリーンの世界に魂を刻み込む行為そのものだった。この狂気とも言える徹底したリアリズムへのこだわりが、彼の出演作すべてに底知れぬ深みを与えていたのだ。