参与観察とは?質的研究の基礎から具体例・手法の違いまで徹底解説
参与観察を遂行する上で、最も高潔な姿勢が求められる領域が参与観察における倫理的配慮です。当事者の懐深くに入り込むがゆえに、調査者は時として、対象者が家族や親友にすら明かしていない秘密や、法や規則に触れるグレーな現場を目撃してしまうことがあります。それらを安易に論文や調査レポートに公表すれば、対象となった個人の生活を破滅に追い込みかねません。
社会学や心理学の視点から言えば、調査者には対象との健全な「心理的バウンダリー(境界線)」を維持し続ける高度な自己規律が要求されます。過度に相手の人生へ介入して依存関係(共依存)を築いてしまうことも、逆に得た情報を都合よく切り取る搾取的な振る舞いも、厳に慎まなければなりません。
以上の特性を踏まえ、参与観察の手法を採用すべき適性と、慎重になるべき条件を明確に提示します。
【参与観察をおすすめできる人・向いているケース】
- マニュアル化できない属人的な職人技や、現場独自の暗黙ルールを構造化したい場合
- 他者の生活テンポや雑談にストレスなく合わせられる、高い傾聴力と身体的忍耐力を持つ人
- 自分自身の偏見や先入観を客観的に見つめ直し、日記等で自己検証(再帰的思考)を継続できる人
【参与観察をおすすめできない・慎重になるべきケース】
- 数日〜数週間以内で白黒をつけた結論や、確実なKPIの証明を求められているタイトなプロジェクト
- あらかじめ決まった仮説の正しさを証明することだけを目的にしているリサーチ
- 他者との感情的距離を保つのが苦手で、相手集団の意見に無批判に同調してしまう傾向がある人