樺太アイヌの過酷な歴史と現在|文化の違いや対雁強制移住の真相に迫る
樺太アイヌの精神世界と日常生活を象徴する文化遺産として、まず挙げられるのが伝統弦楽器「トンコリ(ka-toppuk)」です。細長い胴体を持つ五弦琴で、女性の体を模したとされるその独特なフォルムには、頭、首、胴、足、そして内部に魂を宿す小石(タマ)が収められる構造美があります。開放弦のみを左右の指先で交互に弾く幽玄でパーカッシブな音色は、儀礼や病気平癒の祈り、子守唄など人々の暮らしに深く寄り添っていました。
さらに、雪氷に閉ざされる冬の移動・運搬手段として発展したのが「犬ぞり(セタロ)」の文化です。北海道アイヌが主に馬や徒歩による移動を行っていたのに対し、樺太アイヌは訓練された北方犬のチームを巧みに操り、広大な雪原や結氷した海上を自在に行き来しました。
犬ぞりは単なる移動ツールにとどまらず、犬たちの配置や号令、ソリ(カプカイ)の木工技術に至るまで高度な体系を有しており、大陸系北方民族との技術融合を色濃く反映した文化遺産といえます。