桑野信義の現在2026|大腸がんステージ3Bからの生還と復帰秘話
桑野氏の闘病生活において、肉体的・精神的に最大の試練となったのが一時的人工肛門(ストマ)の装着と、抗がん剤治療に伴う「末梢神経障害」でした。
直腸がんの手術に伴い、腸を休ませる目的で造設されたパウチ(ストマ装具)との生活は、日常生活のあらゆる動作に制約をもたらしました。外出時の漏れへの不安、排泄物の処理、皮膚トラブルといった心理的ストレスは計り知れません。桑野氏は当時の苦悩について、自著やメディアインタビューで「最初は自分の身体の一部を受け入れることができず、情けなさに涙が溢れた」と率直に吐露しています。
さらに追い討ちをかけたのが、術後補助化学療法で用いられた抗がん剤(オキサリプラチン等)の副作用でした。金管楽器奏者にとって命とも言える「唇の感覚」と「指先の繊細なタッチ」が深刻な痺れに侵されたのです。ペットボトルのキャップを開けることすら困難な状態に陥り、トランペットのマウスピースを口に当てても唇の感触が掴めない日々が続きました。
それでも桑野氏は諦めませんでした。ストマ閉鎖手術を経て、術後の頻便や切迫感に悩まされる「低位前方切除後症候群(LARS)」と向き合いながら、ミリ単位で唇の筋肉を鍛え直すリハビリを反復。2026年以降、徐々にステージでの演奏時間を延ばし、現在ではラッツ&スターの盟友・鈴木雅之氏のコンサートへのサプライズ出演や自身のライブにおいて、力強く艶やかなブロウを完全復活させています。