大女優からお茶の間の顔へ――中村玉緒が遺した「笑顔と覚悟」の芸能史と勝新太郎との絆
彼女の「おとぼけ」は、単なる天然ではない。壮絶な苦労をくぐり抜けてきた者だけが到達できる、究極の処世術であり優しさだった。
どんなに辛い局面でも他人のせいにしない。過去を恨まず、与えられた運命をまるごと面白がる。楽屋裏でもスタッフや共演者への配慮を怠らず、常に感謝の言葉を口にしていたという。表舞台で見せる破顔一笑の裏には、歌舞伎の家に生まれた伝統的な女性としての品格と、鋼のメンタリティが同居していた。