尾道空き家再生のパイオニア・豊田雅子が起こした奇跡:坂の街を蘇らせた情熱と実践
2008年、豊田は「NPO法人尾道空き家再生プロジェクト」を正式に設立。本格的な活動に乗り出した。当時、空き家は「地域の負債」と見なされており、不動産業者にとっても仲介手数料が低く、車両が進入できない坂道の物件は取り扱う価値がないと判定されていた。
豊田はこの構造的課題に挑んだ。所有者との泥臭い信頼関係の構築から始め、権利関係が複雑化した物件を一つひとつ解きほぐしていった。行政とも連携を深め、2009年には「尾道市空き家バンク」の運営を受託するに至る。
単なる修繕にとどまらない「価値の再定義」
彼女の手法は、既存の建物を単に新築同様に綺麗にすることではない。その建物が持つ歴史、柱の傷、手吹きガラスの歪みといった経年変化(ヴィンテージ価値)を最大限に活かす設計手法を徹底した。
- あなごのねどこ: 細長いウナギの寝床のような町家をリノベーションしたゲストハウス兼商店街の交流拠点。
- みはらし亭: 築100年を超える絶景の絶壁に建つ洋館付き和風建築を、ドミトリー&カフェとして再生。
- 三景広場・空き家手帖の展開: 空き家再生の手引きを作成し、ノウハウを全国へオープンソース化。
これらのプロジェクトを通じて再生・仲介された物件は150軒を超え、放置されていた空間がカフェ、工房、ギャラリー、そして若い世帯の住居へと変貌を遂げた。