明治9年創業「萩錦」の真実:安倍川の伏流水と若き杜氏が創り出す静岡日本酒の極み
酒造りは生き物を扱う営みだ。萩錦酒造の現場では、5代目社長である萩原知令氏の理念のもと、伝統の技と新しい感性が融合している。現在、酒造りの司令塔である杜氏を務めるのは、社長の娘である萩原綾乃氏だ。
若き女性杜氏の誕生は、老舗蔵に新たな風を吹き込んだ。南部杜氏の流派を汲む確かな技術を継承しつつ、洗米から蒸し、麹造りに至るまでの全工程をミリ単位の精度で見直した。
小規模だからこそ可能な「マイクロ・ブリューイング」
萩錦酒造のタンクは、一般的な酒蔵のものよりも小さい。小さな仕込みタンクを使うことで、発酵時の品温変化を厳密にコントロールできるからだ。手作業で米の状態を確かめ、毎日の醪(もろみ)の表情に耳を澄ます。
「自分たちが納得できる酒しか世に出さない」という姿勢は徹底している。家族経営ならではの密なコミュニケーションと、妥協を許さない職人精神が、萩錦の一滴一滴に命を宿している。