東京五輪の女王ベラ・チャスラフスカ:静かな抗議と波乱の真実
山中での極限状態を乗り越え、彼女は1968年メキシコシティオリンピックの舞台へとたどり着く。十分な調整すら許されない状況でありながら、彼女は凄まじい執念で個人総合連覇を含む複数の金メダルを勝ち取ってみせた。圧倒的な強さだった。
そして、世界のスポーツ史に深く刻まれる事件が起きる。女子種目別床運動の表彰台でのことだ。ソ連の国歌が場内に流れた瞬間、彼女は静かに顔を下に向け、さらに右斜め下へと背けた。言葉や力による主張ではない。しかし、その僅かな動作には、自国を蹂躙した大国への痛烈な抗議が込められていた。このソ連への静かな抗議は、テレビ中継を通じて世界中へ放映され、世界の人々の胸を打った。