ドラフトビールとは?生ビールとの違いや缶との真相を専門記者が解明

ドラフトビールとは?生ビールとの違いや缶との真相を専門記者が解明について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をチェックしてください。

ビールの製造プロセスにおいて、発酵を終えたビールの中には酵母が生きたまま残されています。これをそのまま常温で放置すると再発酵が進んで品質が劣化し、風味が損なわれてしまいます。この問題をクリアするために人類が編み出した手法が「熱処理」であり、現代の技術が生み出したのが「精密ろ過による非熱処理」です。

かつての熱処理ビールは、充填後のビールに約60℃の温水をシャワー状に吹きかけるパストリゼーション(低温殺菌法)を採用していました。熱を加えることで酵母や雑菌を完全に不活性化させ、長期保存を可能にしたのです。この熱処理によって生じるわずかなカラメル化やメイラード反応が、独特の厚みある苦味や重厚なボディ、どこか懐かしい麦汁のコクを生み出します。現在でも熱烈な愛好家を持つ「キリン クラシックラガー」や「サッポロラガービール(通称:赤星)」がこの製法を守り続けています。

対する非熱処理ビールは、0.2〜0.45マイクロメートルという超微細なセラミックフィルターやメンブレンフィルターを通すことで、熱を一切加えることなく酵母を物理的に完全除去します。熱による成分変化が起きないため、麦芽本来のクリアな甘みやホップの華やかなアロマ、そして喉を駆け抜ける清快なキレがそのまま保たれます。現在、日本国内で消費される大手ビールの約99%はこの非熱処理ビールであり、私たちが日常的に口にしているビールの圧倒的多数が、科学技術の粋を集めたドラフトビールなのです。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。