愛と死を描き抜いた渡辺淳一の生涯!名作の裏側と元医師の軌跡
渡辺淳一を語る上で欠かせないのが、元医師という異色のキャリアです。札幌医科大学を卒業後、整形外科医として医療の現場に立ち、母校の講師も務めていた本格的なエリート医師でした。患者の生死や肉体の痛みに日々直面していた経験が、のちに彼の文学を支える強固なリアリズムの土台となります。
作家への転機となったのは、1968年に起きた日本初の心臓移植手術を巡る騒動でした。移植手術の妥当性やドナーの脳死判定に強い疑義を抱いた彼は、大学病院体制への批判を展開。医学界に身を置き続けることが困難となり、辞職を決意して専業作家の道を歩み始めます。
退路を断って執筆に打ち込んだ渡辺淳一は、1970年に『光と影』で第63回直木賞を受賞。戊辰戦争で腕を切断された二人の軍人の対照的な運命を描いた本作は、医療知識と人間の業を巧みに融合させた傑作として高く評価されました。骨太な医療小説のおすすめとして今なお名前が挙がる名作『無影燈』や『麻酔』など、命の現場を舞台にしたサスペンスフルな傑作が次々と誕生することになります。