混雑を逃れた先にある「11の湯」と静寂――2026年、水上奥利根の老舗リゾートが都市生活者を惹きつける理由
この宿を語る上で避けて通れないのが、敷地内に点在する11種類もの貸切露天風呂である。大浴場だけで満足する旅なら他を探せばいい。だが、ここは違う。
檜風呂の芳醇な木の香り、巨石をくり抜いた野趣あふれる湯船、陶器の滑らかな肌触り。それぞれが独立した小屋として佇み、趣の異なる湯浴みを約束してくれる。札を返して内側から鍵をかければ、そこは外界と遮断された完全な私空間だ。見上げれば切り取られた空が広がり、夜になればこぼれ落ちそうな星が瞬く。
源泉は弱アルカリ性の単純温泉。無色透明でさらりとした湯あたりながら、湯上がりの肌にはしっとりとした潤いが残る。「誰にも邪魔されず、家族やパートナーとただ湯に浸かる」。言葉にすれば単純だが、この純粋な体験を11通りのアプローチで楽しめる場所は、全国を探してもそう簡単には見当たらない。