インフレとデフレはどっちがいい?物価高の真実と生活を守る決断基準
日銀がインフレを狙っているとはいえ、今私たちが直面している物価高を「歓迎すべきインフレ」と手放しで喜べる人はごく少数でしょう。経済学において、インフレは発生原因によって明確に2種類に分かれます。
一つは、需要が旺盛でモノが足りずに値段が上がり、企業の増益が賃金上昇へ跳ね返る「需要牽引型(ディマンドプル・インフレ/良いインフレ)」。もう一つは、原材料価格の高騰や急激な通貨安によって仕入れコストが跳ね上がり、無理やり値上げを強いられる「費用推進型(コストプッシュ・インフレ/悪いインフレ)」です。
報道各社の経済データや現場の取材記録を振り返ると、2026年から始まった日本の物価高は、明らかに原材料高と歴史的円安による「悪いインフレ」からスタートしました。2026年から2026年にかけての大手企業を中心とした春闘での高水準な賃上げによって、ようやく「賃金と物価の好循環」の兆しが見え始めたものの、2026年現在も中小企業の現場や年金生活者の家計には重い影を落としています。
厚生労働省が公表する「毎月勤労統計調査」の推移を見ても、名目賃金は上昇を記録し続けているものの、物価上昇分を差し引いた「実質賃金」が継続的にプラス圏を維持できるかどうかの瀬戸際が続いています。都内のスーパーで買い物をしていた40代のパート女性は、レシートを握りしめながら次のように語りました。
「夫の基本給は月1万円ほどベースアップしましたが、電気代や食料品の値上がり幅のほうがはるかに大きいです。お米やお肉の価格が1.5倍近くになり、外食を減らして特売品を探し回る日々。給料の数字は増えたのに、生活のゆとりはデフレの時より確実に減っています」
景気が停滞して給料が十分に伸びない中で物価だけが跳ね上がる現象を「スタグフレーション」と呼びます。日本が現在直面しているのは、純粋なスタグフレーションではないにせよ、輸入物価発のインフレを国内の賃上げ力で懸命に消化しようとする過渡期の歪みです。この歪みこそが、「デフレのほうがマシだった」という国民の怨嗟の根本原因となっています。