大腿骨近位部骨折の全貌|寝たきりを防ぐ治療とリハビリの現実
太ももの付け根部分(股関節付近)が折れる大腿骨近位部骨折は、骨折する解剖学的位置によって大きく「大腿骨頚部骨折」と「大腿骨転子部骨折」の2つに分類されます。この2つは名前こそ似ていますが、骨の性質、血流の供給ルート、そして選択される手術方法がまったく異なります。
大腿骨頚部は関節包(関節を包む袋)の内側にあり、骨頭へ血液を送る血管が集中しています。ここが折れると血流が遮断され、骨が壊死したり癒合しなかったりするリスクが跳ね上がります。そのため、骨のズレ(転位)が大きい場合は、折れた骨をつなぐのではなく、金属製の人工物に入れ替える「人工骨頭置換術」が標準的な選択肢となります。
一方の大腿骨転子部は関節包の外側に位置し、周囲に豊富な筋肉と血流が存在します。骨自体のくっつき(骨癒合)は良好であるため、金属のプレートや髄内釘(スクリューとネイル)を用いて自分の骨を固定する「骨接合術」が行われます。日本整形外科学会が示す最新の『大腿骨近位部骨折診療ガイドライン』においても、受傷前の全身状態を迅速に評価した上で、可能な限り受傷後48時間以内の早期手術を行うことが合併症抑制と生存率向上に直結すると強く推奨されています。