立体交差で渋滞が一変する仕組みとは?高架・地下の違いと最新事情を解明
「立体交差さえ造れば交通問題はすべて解決する」という言説は、インフラの維持管理現場から見れば半分正しく、半分は危険な誤解です。ネット上では「なぜすべての交差点を立体化しないのか」といった疑問が頻繁に投げかけられますが、そこには構造物が抱える固有のリスクと都市の構造的限界が存在します。
その最たる例が、近年激甚化する気象災害と大雨時の冠水事故対策です。2019年の台風や千葉県での記録的豪雨の被害を受け、神奈川県では大雨時に冠水の恐れがあるアンダーパス(立体交差式地下道)計17カ所で緊急対策を実施しました。危険箇所の手前への注意喚起看板の設置、路面への警戒カラー舗装、さらには水深センサーと連動した自動遮断ゲートの整備が急ピッチで進められています。
アンダーパスは構造上、周囲の道路よりも標高が低くなるため、豪雨時には雨水が一気に流れ込む「すり鉢」となります。大容量の地下排水ポンプが配備されているものの、1時間に50ミリを超えるような線状降水帯の集中豪雨が発生した場合、排水能力の限界を超えて数分で水深数十センチに達することがあります。「少しの水たまりだろう」と過信して進入した普通乗用車がエンジン吸気口から水を吸い込んで停止し、運転席のドアが開かなくなって命を落とす悲惨な水没事故が全国で後を絶ちません。
また、幹線道路だけを立体化しても、その先にある生活道路や次なる平面交差点の許容量が増えていなければ、単に「渋滞の発生場所が数百メートル先へ移動しただけ」という現象(ボトルネックシフト)に陥ります。立体交差は都市全体の交通ネットワークと調和して初めて真価を発揮するものであり、単体での万能薬ではないという冷徹な視点が求められます。