息切れの裏に潜む「見えない心不全」— 2026年、肺高血圧症治療のパラダイムシフトと見過ごされる初期シグナル
息が上がること自体は、誰にでも起こる日常的な生理反応だ。だからこそ、病的な兆候との境界線は極めて見分けにくい。肺動脈性肺高血圧症(PAH)をはじめとする疾患群では、自覚症状が現れてから確定診断に至るまでに平均して2年以上の月日を要してきた歴史がある。この空白の期間に、心臓のポンプ機能はじわじわと摩耗していく。
初期に現れるのは、階段や坂道での息切れ、原因不明の全身倦怠感、そして下肢の浮腫だ。進行すると、血流不足による失神や胸痛が起きる。一般的な胸部レントゲンや心電図の簡易検査だけでは異常が見逃されるケースも珍しくない。多くの患者が呼吸器内科、循環器内科、果ては心療内科を何軒も渡り歩く「ドクターショッピング」を経験している現実は、医療アクセスの優れた日本においてすら未だ根深く残っている。