電圧降下の許容範囲はなぜ厳格?内線規程基準と計算式の真相まとめ
Web上の技術掲示板やSNS上で頻繁に見受けられる致命的な誤解が、「ブレーカーの定格に合わせた許容電流さえ満たしていれば、電線サイズ選定は合格である」という思い込みです。現場の若手設計者やDIYの延長で施工を行う層が最も陥りやすい落とし穴と言えます。
許容電流はあくまで「電線がジュール熱によって被覆を溶かしたり発火したりしない物理的限界値」に過ぎません。これに対して電圧降下は「末端機器が健全に動作するための品質限界値」です。この2つの基準は全く異なる次元の評価軸を持っています。
特に配線こう長が長くなる現場では、このギャップが牙を剥きます。例えば、三相200V・定格電流50Aの動力負荷に対し、受電盤からのこう長が15m程度であれば、許容電流の観点からは $14\text{mm}^2$(許容電流約61A)のCVケーブルで熱的には何の問題も生じません。電圧降下も約1.65V(約0.8%)と極めて小さく、内線規程を軽々クリアします。
しかし、同じ50Aの負荷が工場棟の離れにあり、こう長が100mにおよぶ長距離配線だった場合はどうでしょうか。許容電流だけを見て $14\text{mm}^2$ を選定すると、電圧降下は実に約11.0V(降下率5.5%)に跳ね上がります。これは内線規程の許容値(2〜3%)を遥かに突破し、現場検査で即座に不合格判定を受けるだけでなく、モーターが全負荷運転に入った瞬間に低電圧トリップを起こして稼働不能に陥ります。この場合、電圧降下を2%以下(4V以下)に抑えるためには、許容電流からは過大に見える $38\text{mm}^2$ や $60\text{mm}^2$ への大幅な電線サイズアップが絶対条件となるのです。