「飄々としている」魅力の裏側|名作ヒットを支える心理構造と演技
とりわけサスペンスドラマというジャンルにおいて、掴みどころのない人物の存在は物語のエンジンそのものとなる。犯人なのか味方なのか、あるいは第三の観察者なのか。真意を隠した笑みを浮かべる人物が一人画面に配されるだけで、シナリオ上のすべてのセリフが二重の意味を持ち始める。
東宝をはじめとする映画会社が手掛けるサスペンス映画でも、クライマックスにおけるカタルシスを高めるのは、常にこうした「読めない人物」の動向だ。激しい情動を見せる周囲の登場人物に対し、冷徹な静けさと軽快さを保ち続けるキャラクターは、作品全体に洗練された知的な緊張感をもたらす役割を果たしている。