カンヌ頂点パルムドール衝撃の裏側と映画史を塗り替えた傑作選
2010年代後半、カンヌの歴史に極めて鮮烈な足跡を刻んだのがアジアの映画作家たちだ。2018年、是枝裕和監督の『万引き家族』がパルム・ドールを獲得した際、パレ・デ・フェスティバルの劇場は静かな感動に包まれた。血のつながりを超えた擬似家族の温もりと、その裏に潜む現代日本の冷徹な格差社会。是枝監督特有の繊細な眼差しは、言語や国境を軽やかに飛び越え、世界共通の痛切な問いとして審査員の胸を打った。
その翌年、さらなる衝撃が世界を駆け巡る。ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が、審査員全員一致の完全勝利を収めたのだ。圧倒的なエンターテインメント性を保ちながら、容赦ない階級闘争の寓話を完璧な脚本構成で描ききった同作は、カンヌのパルム・ドールから米アカデミー賞作品賞へと続く前代未聞の快進撃を成し遂げた。是枝裕和とポン・ジュノが示したのは、自国のローカルな現実に深く根ざした表現こそが、最も強烈なグローバル・シネマになり得るという揺るぎない事実だった。