Dnaと染色体の決定的な違いとは?遺伝子・ゲノムの謎を本に例えて解説
小中学校の理科や科学イベントで大人気のテーマに、バナナやブロッコリー、あるいは自分の口腔粘膜を使った「DNA抽出実験」があります。台所用洗剤と食塩、エタノールを使うだけで、試験管の中に白いもやもやとした糸状の物質が浮かび上がってくる様子を見たことがある方も多いでしょう。
この実験で起きている科学的なプロセスは次の通りです。
- 細胞膜と核膜の破壊:台所用洗剤に含まれる界面活性剤が、脂質でできた細胞膜や核膜を溶かし、内部のDNAを外へ放出させる。
- タンパク質の分離:食塩水を加えることでナトリウムイオンがDNAに結合し、DNA同士がまとまりやすくなると同時に、ヒストンなどのタンパク質を沈殿させやすくする。
- DNAの析出:冷たい無水エタノールを静かに注ぐと、水には溶けるがエタノールには溶けないDNAが、白い糸くずのように姿を現す。
ここで多くの人が「今見えている白い糸は染色体なのか?」と疑問を抱きます。結論から言うと、目に見えているのは無数のDNA分子が絡み合って束になった塊です。実験の過程でタンパク質(ヒストン)が外されているため、染色体の形はすでに崩壊しています。1本のDNA分子や単体の染色体は電子顕微鏡や光学顕微鏡でしか見えませんが、何百億本ものDNAが集積することで、肉眼でも観察できる実体となります。