嘴平伊之助の素顔はなぜ美形?猪の被り物の理由と母・琴葉の悲劇
伊之助が並外れた美貌を持つ生物学的理由は極めて明快です。それは実の母親である「嘴平琴葉(ことのは)」の顔立ちを寸分違わず受け継いだからに他なりません。
公式ファンブックや本編終盤(原作第18巻・第157話〜160話)で明かされた過去によると、母・琴葉は十代半ばで伊之助を出産した非常に美しい女性でした。しかし彼女の境遇は過酷を極め、夫や姑からの凄惨な家庭内暴力(DV)によって顔が変形するほど殴打される日々を送っていました。我が子である伊之助にまで暴力の手が及ぶことを恐れた琴葉は、雪の降る日に裸足のまま逃走。救いを求めて辿り着いた先が、上弦の弐・童磨が教祖を務める新興宗教「万世極楽教」の寺院でした。
童磨自身が「琴葉は本当に頭が弱かったけれど、顔立ちが飛び抜けて可愛らしかった」「美しかったから喰わずに傍に置いておいた」と語っている通り、冷酷無比な鬼の琴線に触れるほどの天賦の美貌の持ち主でした。伊之助の端整な顔立ちは、過酷な運命に抗いながら我が子を守り抜こうとした若き母の形見そのものだったのです。
しかし平穏は長く続きませんでした。教祖・童磨が信者の人間を喰らう現場を目撃してしまった琴葉は、伊之助を抱えて寺院を脱出。断崖絶壁に追い詰められた彼女は、「この子だけでも生きてほしい」という悲痛な祈りとともに、まだ赤ん坊だった伊之助を激流の川へと投げ落としました。直後、琴葉は童磨の手によって殺害され、骨の髄まで喰らい尽くされるという凄惨な最期を遂げます。伊之助の素顔には、母の極限の無償の愛と、鬼滅の刃屈指の悲劇が宿っているのです。